FM長野・NHK-FM リスナーである ラジオネーム:チャート★ドランカーの個人ブログです。
私の 週間選曲リスト と 週間放送視聴日記 を 公開・保存しています。

第1089回ランキング

   
  1. 第 1 位 ( △ )
    Roxette “Listen To Your Heart”
    YouTube Official Music Video
  2. 第 2 位 ( ▽ )
    NHK総合・大河ドラマ「光る君へ」テーマ音楽 [冬野ユミ]
  3. 第 3 位 ( ⇒ )
    Uru「アンビバレント」
    TSB 日テレ・アニメ「薬屋のひとりごと」第2クール オープニングテーマ
  4. 第 4 位 ( ★ )
    米津玄師「さよーならまたいつか!」
    NHK総合・連続テレビ小説「虎に翼」主題歌
    ♪ 奥底にはワルツの旋律が聴き取れますが、エレクトロニカな和声を感じさせる佳曲。
  5. 第 5 位 ( ⇒ )
    Paul Weller “Soul Wandering”

 我が人生において(笑)最大の整理作業である、テレビ録画・ラジオ録音のデジタル化 と 統合管理。ラジオ録音は デジタル化し、USBメモリーで統合管理を開始しました。テレビ録画は デジタル化を終え、統合管理に向けて鋭意整理を続行中です。紙媒体の放送資料についても、PDF化を進めており、年内には 目途をつけて、このブログで完了を発表出来ると思います。

 問題は書籍です。何度か表紙を含めページ全体をデジタル化する電子書籍を検討しましたが、結局紙媒体での保存を続けています。大切にしてきた書籍を電子化するには、ページをバラバラにしたり、廃棄を検討する事が やはり必要です。どうもそれは 忍びないものがあります。かと言って、長期に及ぶ所蔵で痛んでしまい、もはや保存に適しない書籍があるのも事実です。

 そこで保存に適しない本は、出来得る限り、購入した版で美品を古書市場から手に入れる事を始めました。現在の古書市場では、ネットの発達から、容易に目的書籍の入手が可能です。古い文庫本から所蔵書籍の入れ替えを始めました。私が中学生の時に購入した、旺文社文庫・安岡章太郎 著「遁走」も、その 1冊です。カバー付き初版の美品と交換する事ができました。

 私が安岡章太郎を知ったのは、国語教科書に収録されていた「サアカスの馬」でした。劣等少年だった安岡が、痛々しいほど痩せ弱っていたサーカス団の馬を見て同情しますが、実は団の花形スターだったと知り強烈な応援意識を有するという前進性のある少年文学でした。それを教科書で読んだ私は 興味を持ち、旺文社文庫から、安岡章太郎の文庫本を校内で購入したのです。

 その文庫本が「遁走」でした。この「遁走」こそ、私の青少年期に強く印象付けられ、そして私の運命論まで形成した戦争文学なのです。やはり同じ様な劣等青年だった主人公が、太平洋戦争で徴兵され北満(中国東北部)へ出征します。そこで理不尽で凄惨な旧陸軍の内務班生活を送るのですが、左湿性胸膜炎を発症し、玉砕へ向かう部隊から離れ陸軍病院に入院します。

 その病院内でも、同じ患者同士である下士官から、やはり私的制裁の蔓延する軍隊生活を送るのですが、症状は回復したのに、なぜか前線から後方へ後方へと転院をし、ラストでは 内地還送、つまり日本国内の陸軍病院で徴兵(現役)免除になる命令を受けます。主人公は、北満という厳しい最前線へ送られたにも拘わらす、終戦ひと月前に事実上の復員をしてしまうのです。

 文庫本には、遁走の他に、徴兵免除後の生活を描く短編「トリと豪蔵」も収録されており、そこには、大規模な動員を受けた日本軍兵士の中で、もっとも幸福なひとりであったと追述しています。描かれた主人公は、安岡章太郎の経歴と一致しており、遁走は 自伝的小説です。破滅へ向かう軍隊から、遁走と言うより逆走していく安岡章太郎の自叙伝に、私は 強く惹かれました。

 当時どの様な基準で召集令状が送られ、罹患して軍事病院に送られた兵士が、どの様な基準で内地還送に選ばれるのか、全く秘密のベールに包まれています。しかも安岡は、サアカスの馬での劣等少年からそのまま出征しており、要領とは全く無縁な よく殴られる二等兵でした。発病がきっかけとは言え、衛生環境が劣悪な軍隊内では、多くの兵士が罹患しているのです。

 この遁走を批評している文芸評論家達は、反戦史観に囚われ、安岡の運命の流れを解説出来ていません。偶然の積み重ねとしてだけ捉えているのです。安岡章太郎は、内地還送の切符を得て、最も幸福な日本軍人となれたきっかけや、そこへ通じる思考過程を、客観的な凝視を通して作品に散りばめています。この読解から得られる運命論こそ「遁走」最大の文学的特質なのです。

 私は この「遁走」から、願望に固執して組み立てていく要領のいい人生設計は 危うく、試行錯誤の連続でも客観的な凝視を続けて、小さな正答を積み重ねていく人生こそ幸運を得ていくのだと学びました。私は この「遁走」を、中学生の時に読み、以来バイブルの様に(笑)所蔵してきました。今回美品の文庫本も入手し、愛読書として生涯保管し続けようと思っています。


ブログ開始は 2003年です。

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