FM長野・NHK-FM リスナーである ラジオネーム:チャート★ドランカーの個人ブログです。
私の 週間選曲リスト と 週間放送視聴日記 を 公開・保存しています。

第537回ランキング

   
  1. 第 1 位 ( △ )
    NHK総合・大河ドラマ「八重の桜」テーマ音楽 [坂本龍一]
  2. 第 2 位 ( △ )
    絢香「ツヨク想う」
    TSB 日テレ・ニュース番組 “NEWS ZERO” エンディング テーマ
  3. 第 3 位 ( ▽ )
    SBC TBS・月曜ミステリーシアター「確証 ~ 警視庁捜査3課」オープニング テーマ音楽 [市川淳]
    ♪ 1位 3週、登場 6週。
  4. 第 4 位 ( ▽ )
    LOVE PSYCHEDELICO “Calling You”
    ミスタードーナツ テレビCMソング
  5. 第 5 位 ( ⇒ )
    畠山美由紀「夜と雨のワルツ」

 クラシック音楽の世界において、天才音楽家は、早逝だと言われる事があります。このまま生涯を全うし多くの作品を書き残していけば、もっと名声が高くなったのにと思いますが、早逝してしまった天才音楽家にとって、それは叶わぬ事です。クラシックの世界だけでなく、戦後発達した邦楽(歌謡曲・J-POP)の世界にも、早逝の運命だった天才音楽家は 存在します。

 大村雅朗(おおむら まさあき)さんも、早逝してしまった天才音楽家のひとりです。大村雅朗 さんは、和声 と 調性を深淵から理解し、国内のポピュラー音楽を高い極みまで昇華させていった、我が国で ただひとりのアレンジャーといっても過言ではありません。我が国において、私が最も尊敬するアレンジャー(編曲者)でしたが、46才の若さで早逝してしまいました。

 邦楽(歌謡曲・J-POP)に関しては、まず歌詞があり、次に歌詞を表現する曲の旋律が重要視され、大衆も その範囲で音楽を理解します。しかし、その先があるのです。レコードからCD、そしてダウンロードと媒体は変わっていきましたが、ヴォーカルも含めて、ひとつひとつの楽器の和音を結び付ける和声 と 調性こそが、ポピュラー音楽作品の根幹を成しています。

 大村雅朗 さんの音楽創作の出発点は、ヤマハ音楽振興会の本部研究室でした。ですから大村雅朗 さんは、当時のラジオ・テレビ番組「コッキーポップ」や ヤマハ・ポピュラーソング・コンテストから派生した「ニュー ミュージック」を手始めに、全盛期だったアイドルの新譜作品をも拒まず、1970年から 90年代にかけて、数多くの優れたアレンジを送り出しました。

 当時のヤマハ系ニューミュージックは、歌詞・旋律で創作が停止してしまっているものが多く、またアイドル歌手の新譜作品に至っては、創作以前の段階(笑)つまり歌唱や 表現力に、著しい未成熟さを感じさせてしまう事例が殆どでした。大村雅朗 さんは、それらの欠点をカバーして余りある、素晴らしいアレンジを提供します。伴奏の和音に強い意味合いを持たせたのです。

 ブロガー プロフィールにも詳しく書いていますが、私は 音楽チャートマニアとして、30年近く洋邦問わず 10万回を超える新譜の強制的(笑)な反復聴取を続けてきました。その流行歌の反復聴取の果てに、アレンジで使用した楽器のモード(旋法)や音律に やたら鋭敏となり、楽器の和音を相当細かく聞き分けられる和声感 と 音楽調性感が身に付いてしまったのです。

 その私の和声感 と 音楽調性感に基づき、大村雅朗 さんの最高傑作を選んでみると、人気のある松田聖子“SWEET MEMORIES” や 山口百恵「謝肉祭」とは違う楽曲になってしまいます。多楽器による和音構成から和声に至るレベルで選曲すると、大村雅朗 さんの最高傑作は、八神純子「想い出のスクリーン」(1979年)のアレンジだと感じています。

 メジャー・デビュー作「思い出は美しすぎて」は、編曲者が大村雅朗 さんでありません。また大村雅朗 さんをアレンジャーとして大成させた「みずいろの雨」でもないのです。八神純子「想い出のスクリーン」のオリジナル盤をぜひ聴き込んでみてください。何度も聴きこんでいくと、大村雅朗 さんの情感を和音構成に反映させる、独特な編曲のスタイルが理解できます。

 「想い出のスクリーン」は、特に終奏部が圧巻です。ヴォーカルの畳み掛けるような伸びから、E.Gt(エレキギター)Str(ストリングス)さらにScat(スキャット)や 単音のサンバ ホイッスル と 手拍子に至るまで、総ての楽器和音が和声となって響き合い、一分の隙もなく完璧に調性されており、奇跡を突き抜けて もはや神域に達している作品です。

 さらに私の音楽和声感・調性感から、大村雅朗 さんの傑作を全作品より さらに3曲取り上げてみます。まず 松永夏代子「メランコリーの軌跡」です。玉置浩二作曲によるアニソンですが、哀感を帯びた旋律全体を見事に生かした抜群のアレンジです。Syn(シンセサイザー)が主楽器ですが、その電子楽器の和音まで、和声 と 調性が整っており、この楽曲も神域に達しています。

 次は、REIMY(麗美)「恋する時間」です。筒美京平の計算された旋律と、コケティッシュなヴォーカルを生かすため相当難度の高いアレンジですが、打楽器の和音構成を加えて一気に調性を取っています。まるでヴォーカルを補正していくかの様な、楽器和声を感じるのです。特に その打楽器 と ストリングスの合致した和音で終奏する大胆さは 秀逸です。

 最後は、芳本美代子「横顔のフィナーレ」です。イントロ・間奏 そして アウトロが、完全に元の旋律と遊離している作品ですが(笑)そのイントロ群のアレンジは、大村雅朗 さんの和声感 と 調性感を理解する上で 教科書的な作品です。今どんなアレンジャーでも、この様な編曲は出来ないと思います。3曲共に、図らずも全て 1986年 発表の作品になりました。

 大村雅朗 さんのアレンジ、特に和声に貫かれているのは、音楽的技巧ではなく、人間が感じる事が出来る 豊かな情感に彩られた深遠な美しさです。大村雅朗 さんは、ヴォーカルを含めた演奏楽器の和音構成によって、その美しさが表現出来る稀有なアレンジャーなのです。この才能は 習得によって得られるものでなく、ここで挙げた作品群は、類例なき美しさに彩られています。

 もう既にポピュラー音楽は、洋邦問わず旋律の組合せにおいて出尽くし感が蔓延しており、ラップ音楽を なぞっただけの単旋律なアレンジが横行し、シンコペーション や オブリガードなどの旋律技巧だけで、音楽的価値を得ようとしています。これは 和声感 や 調性感以前の問題です。だからこそ大村雅朗 さんが、この時代に健在だったらと思うと、誠に残念でなりません。

 大村雅朗 さん。あなたが去ってしまって 16年もの歳月が経った今、あなたの足元までたどり着いたアレンジャーは、まだ ひとりも現れません。


ブログ開始は 2003年です。

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